管理栄養士。元日本オリンピック委員会強化スタッフ。
2004年アテネオリンピックビクトリープロジェクトチーフ管理栄養士として女子バレーボールチームや水泳を、2008年北京五輪全日本男子バレーボールをサポート。Jリーグプロサッカー選手やプロ野球選手をはじめ、柔道やゴルフなどのサポートも行う。
一般や部活動を対象にした食育活動や、専門学校、短大などで非常勤講師も務める。
著書に「10代スポーツ選手の食材事典(大泉書店)」、「カラダの悩みは食べ方で99%解決する(ゴルフダイジェスト社)」などがある。
□スポーツ栄養WATSONIA
(http://www.kawabatarika.com/)
□川端理香オフィシャルブログ「HAPPY FOOD」
(https://ameblo.jp/kawabatarika)
ゴルフは特に集中力が大切な競技。疲れていると集中力が保てず、修正が難しいスポーツです。疲労感をいかに軽減するかにおいて食事は絶対欠かせないもの。いくら睡眠や気分転換で補っても、食事がおろそかでは回復が出来ません。
長期的に見れば、食べることは自分の身体を作りあげることにつながるのです。
食べた物で人間はできています。ジュニア期は成長する段階なので、この時期に食べないと身体は成長しません。特に代謝がいい(細胞の入れ替わりが早い)ため、むしろ大人以上に食事をとる必要がある時期と言えます。
実際スポーツをするということは、身体(筋肉・骨)を壊していることなので、成長する分・スポーツをする分を補って身体を作るのです。それができていないと、どんなに練習しても「ゴルフが上達しない」ということが起こりうるので、どんどん身体を作り替えるという意味でも食事がとても大切になります。
ゴルファーに限らず、スポーツ全体、日本人の食生活は気を抜くと炭水化物に頼りがちな傾向があります。筋肉・骨・血液・皮膚・内臓と全てを作っているものは「タンパク質」なので、炭水化物のみに偏らない食生活が必要。特にジュニアゴルファーは練習することで筋肉もどんどん壊れるので、疲労を回復するためにもタンパク質は非常に重要です。
肉・魚・卵・豆・乳製品の5種。この5種を1食でたくさん取るのでなく、朝・昼・間食・夜など回数を分けて摂ることで身体は作られやすくなります。回数が少ないと吸収されにくいのでこの時期は、“回数”を意識して摂りましょう。
5種はタンパク質以外にミネラルやビタミンなどが含まれていてそれぞれで違いがあるため、一種類だけではなく、肉・魚・卵などバランスよく摂るとタンパク質以外の栄養素が摂れて様々な効果につながります。植物性タンパクとなるのは豆類だけなので、動物性タンパクと同じ量を摂るのが理想的。なので植物性タンパクの豆は、毎食摂るように心がけるとよいでしょう。
※アレルギーなどがある場合はムリして摂らないよう注意してください。
嫌いなものに含まれる栄養素は不足しやすいもの。強くなるためには嫌いなものを食べる努力をすることが大事で、結果としてメンタルの強化にもつながります。
効果的に好きな食べものを取り入れたりしながら『嫌い=食べない』ではなく、どうしたら食べれるようになるか親子で考えることもよいでしょう。
季節の変わり目から、意識して対策をしていくことが大切です。夏場は早いうちから水分の摂取を意識すると夏バテしにくい身体に。また、ジュニアの骨折が多くなる冬場は、太陽にあたることで身体に作られるビタミンDの減少が考えられますので、早めにビタミンDを意識しておくことで骨折の予防をすることに。
成長という長い目線で見ると「食べる時間」は大事になります。ジュニアの食事は回数が大切なので朝ご飯を食べないと、身体を作るチャンスを失うことに。人の体内時計は、朝起き太陽を浴びて、食事をとることでリセットされるため、その習慣づけをしておくと大人になって、リズムが崩れにくくなります。
練習と食事と共に、身体を休めるための睡眠は基本。
疲労した状態で練習しても技術は向上しません。集中力を保つうえでも、睡眠でいかに身体を休めるかが重要です。特に疲労回復や身長などに関与する成長ホルモンは、22時-2時に多く分泌されるので、その時間はしっかりと寝ておきたいものです。
ジュニアは身体つくりが大切なので大人のように極端ではありませんが、普段・試合前・試合中など食べわけは必要です。
練習中、普段はとにかくタンパク質を意識的に摂ること。またそれと同じくらいに野菜もたくさん摂ることです。野菜には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に入っているので、良いコンディションを保ち免疫をつけるために必要になってきます。
大会前、普段は、消化がよくそしてエネルギーになる炭水化物を摂るとパフォーマンスが良くなり、集中力が続きます。消化するまでに3時間~3時間半ほどかかるので、個々に調整しながら大会当日は動く3時間前には食べておきましょう。
タンパク質を中心に野菜もたくさん摂り、試合前に炭水化物と切り替えをしていくと、身体がしっかり作られてジュニア選手にありがちな、試合当日緊張で食事が摂れない、内臓が弱い、緊張しておなかを壊すことが改善されます。
また食事にムラがでやすいお子さんも、『頑張って食べる』ことによってメンタルも強くなり、本番に強い選手に成長するのです。
日頃のコミュニーケーションの中で、トップアスリートに好きな食べ物を聞くと、必ずといっていいほどお母さんの作ってくれた料理を挙げるんです。またそれを活力にしているトップの選手がたくさんいます。現代は忙しい親御さんたちが多いと思いますが、何か心に残るようなものをつくってあげると良いのではないでしょうか。
以前、全く食事に意識のないトップアスリートを任され食事指導を続けたところ、食べることに興味を持ち、規則正しい生活をするようになった相乗効果でパフォーマンスも向上。食を意識することによって自分自身強くなるだけでなく、感謝の気持ちを持って人に応援されることに向き合ったりと、今まで見えないものが感じられてきたんですね。
今は様々な競技の選手たちを受け持っていますが、できる限りひとり一人に、寄り添った指導を心がけて楽しんでいます。大切な食生活というものを通して、しっかりとお子さまと向き合ってあげることで、あらゆる成長につながっていくと思います。